講談社文庫新刊 ビビビ・ビ・バップ 奥泉光

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一昨日深夜読了、800ページを4日で読んだんだな高齢者にとってはけっこうくたびれ読書体験だけど楽しかったよ、奥泉長編としてはラストが大層まとも着地成功で加点ありそう。

それまでなんかモヤモヤ拡散しっぱなしの疑問符長編がいくつも続いたので、奥泉作品読むのが怖いって「饅頭怖い(小説内で談志が演ってた)」状態がすこし続いた。クワコー新作とか「雪の階」とかすてきな小説を今年読めたおかげで平静になれた…ってこれはいい読者じゃないですね。でもさ“坊っちゃん忍者”だの“プラトン学園”だの…ああクワコーデビュー作の“モダール…”とか外れも多い奥泉作品なんでそんな予断も仕方ないのか。

奥泉氏とわたしってほぼ同世代で大学時代に末廣亭蠍座紀伊國屋書店も通っててだから若き氏と邂逅もあったかもねの石丸くんだが、残念ながらピットインとかのライブスポットは縁がなかった行ったこともないし、ジャズは通り過ごしたっつうかクロスオーバーとか易きに流れたっつうかこちらの小説に出てくる著名なアンドロイドジャズメンの多くは名のみ知るというところ、演奏スタイルやその他分からぬままでセッション場面はまあ飛ばし読みです、また最初の新宿文壇バーシーンも多彩な文化人入り乱れですが“なんかこれ意味あんのか?”状態で、その後の夢の中でのゴジラウルトラマンシーンと一緒でほぼスルーしちゃった。

立川談志古今亭志ん生が毒薬…っつうかウィルス作るシーンとかなんかわたしには像を結ばずすこし険呑、志ん朝がもすこしつっけんどんに談志と絡む方がよかったか。もちろん奥泉(&わたし)世代は志ん生の晩年の高座風景を知っており、ちょっと実景とそぐわない感があったか、でも2人してクルーザーで副社長伊達邦彦にウィルス埋め込むあたりは楽しかったしこれでよかったのかも。

終章「閉幕―宇宙の音楽」でドラマがきちんと収束したのは本当にとても大事、でも初代フォギーが2029年の大感染で死んだとどこかで記されていて、となるとこの幕引きでよかったのか(つまりは終幕の大感染であまた混乱と不慮の死があるだろうし)まあでも人類に未来はありそうだから初代フォギーの不慮の死にも意味があったのかな。でもって初代フォギーの大冒険「鳥類学者のファンタジー」をも一度読みたくもなっちゃったりした、だから本作とても有意義な読書体験でしたね。