文藝春秋9月刊 奥泉光 黄色い水着の謎桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活 2

健康福祉学部「こどもすくすく科」の田所香苗准教授という変なキャラが、わりと冒頭で初登場したのだが残念ながら会議の司会だけで他には出番がなかった、テヘとか平気で使う学校関係者だものクワコーと間抜けな一騎討ちさせたかったしもしかしてツンデレキャラだったかもしれないし、まあ出番があるのかないのか今後に期待したいですね。
ミステリとしてはまあ及第点かな「期末テスト」は「匣の中の失楽」、「黄色い水着」は「Yの悲劇」が底本かな…ってあれま、それをいってはネタばれにならなきゃいいか、でもまあいいさ書いちゃったんだし。
まあ最底辺の大学の教員というクワコーの境遇は辛いし薄給も悲しいのだけれど、でもやっぱりもすこしコンストラクティブでポジティブな教員生活が見たいとも思う。近畿大学の教授でもある著者のスタンスってばレータンやたらちねのクワコーとイコールじゃないとは思うんだが、でもまあ教員生活としてはやけくその著者なのかなとも思わないでもない…っていうか、近畿大学教授で文学者っていえば後藤明生だよね、わたしの時代的には。文学者を大事にしていない大学には思えないし、まあわりとフィクションなんだろうねえ。
このたびはサブロー准教授、ソクシン教授の弱みを握ったクワコーだったし、前作で弱みを握ったはずの馬沢学科長はコスプレで逃げおおせたような書き方だけれど、本当は森ガールのお嬢さんなどいろいろ困っているはずだし、クワコー他人の弱みを握って出世譚というような道中双六的に立身出世しそうもないのは、ちょっと残念。
あとまあどうでもいいことなんだけれど、推理に関する会話などが面白くなくて「…猫である…」「鳥類学者の…」を書いた人とはちょっと思えない情けなさは、ご自分で分かっていらっしゃるのだろうが相当辛い。