新刊案内チラシ 文春文庫 2019年7月

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文春文庫2019年7月の新刊

久しく見ぬうち様変わり、両面新刊の表紙カバーとなっていた。カバーにある通り佐伯泰英の文庫「酔いどれ小銀次」シリーズが新刊のよう、また「居眠り磐音」シリーズ2巻が決定版との聞き慣れぬシリーズ名で今月発売のよう。新装版という名で「竜馬がゆく」とか「御宿かわせみ」とかもあったけどねえ…電子ブックでよさそうだけどねえ。

購入したのは中村文則「私の消滅」。大昔(10年前だけど)読んだ「世界の果て」にはけっこう入れ込んでたけど、その後どんどん有名作家になってゆく中村氏にいろいろ追いつけずようやく文庫で購入。残念というかこういう設定の醫學ミステリ(わあ旧字に変換だ)ってけっこうあるよね、旧字で読みたくなっちゃう「ドグラ・マグラ」や木々高太郎の小説でこんなの読んだ気がするわな、そのあたりの地平から先に進めず現代の精神分析ってぼやっと仕事せずなのかしら。登場人物らみな岸田秀から一括されそで情けない“自己同一化だ”やら“はしゃぎすぎだ”と、まあはしゃいではいないがみなさん脳に電極ビリビリさせてはしゃいでいるようにしか思えず、こんな軽く取り換え可能な人格なんかでみなさん満足なの?と疑うしかない。不出来な小説だと思うが不気味さとかはわりと巧みに出ていた、少年時代の主人公が自宅の灯りを見て帰宅したくなくなるやるせなさは共有化できるだろうから、そのへんにもひとつ工夫がほしかった。

小説内に宮崎勤関連のデータがわりと多く入っていて、また名前だけしか出てこぬが自殺サイト殺人者前上博も主人公と同一視さす性癖みたいに扱っていて、作品を理解する補助線ではあるがまあちょっと不要だった、も少し作者に知恵を絞ってほしかったなと残念に思いました。