新潟趣味図鑑 熱中探求 9 新刊案内収集

3月22日新潟日報朝刊に管理人の趣味に関してとても大きなスペースで紹介していただきました。趣味の品々を扱ってくれるのだろうとの、当方の予想を超えて、わたしという人物を括るように記事はまとめられていて、それこそ記者の能力と品格とがテキストに現れており、それを読むことはわたしにとってとても幸福なことでした。

にいがた趣味図鑑 《熱中探求》 新刊案内収集

新刊本に挟まれている新刊案内のチラシ。何げなく捨てられたり、挟んだままになっていたり、あまり気にかける人は多くないだろう。だが「自分にとって新刊案内は、過去とつながる道具なんです」。新刊案内のチラシを集める新潟市中央区の石丸一雄さんは、魅力を語る。自宅の幅1メートルほどの本棚1段は、約3千種類の新刊案内をとじこんだA4版ファイル41冊が占める。
大切なファイルを開けば、印刷された本の書名や、時代を彩った流行作家の名前が躍る。イメージキャラクターとして芸能人の懐かしい顔も見える。石丸さんは「文字の大きさなどで出版社のその月の“イチ押し!”がわかります」と一つを指差し解説した。
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28歳の時に学生時代の友人に誘われ上京し、赤羽(北区)で中華料理店を始めた。カウンター席15席だけの小さな店。二人で厨房と接客をこなし、忙しい時は午前6時から仕込みを初めて、午後10時まで働いた。
子どものころから本好き。仕事を終えた後、書店めぐりが楽しみだった。店に入ると、日常の嫌なことを忘れ、本の世界に没頭できた。
本格的に新刊案内を集める契機となったのは11年前。父親が病気で倒れ、新潟市の実家に戻らなければならなかった。引っ越しで、頭を痛めたのが千冊以上の本の山。実家の広さや、本を送る代金を考えると、全部をもって行くのは難しかった。
読みためた本は、東京で暮らした証し。「何とか思い出を残せないか」「代わりになるものはないか」そう考えて目を付けたのが、自身が買った本の書名も載っている新刊案内だった。本から抜き出して見ると、若かったころ仕事の合間に読んでいたミステリー作家の佐野洋らの名前を見つけた。つらかったことや、がむしゃらだったことなど、自分が当時、なにをしていたか、さまざまな記憶が頭に浮かび、新刊案内の魅力に引きこまれた。
「仕事帰りに、ほっとして見上げた空の色とかも思い出せたんですね」と振り返り、「家族写真のアルバムみたいなものでしょうか」。新刊案内を収めたファイルは石丸さんにとって、さまざまな思いでが詰まったアルバムとなった。
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新潟に戻ってからも清掃のパートをしながら、収集を続けている。毎月、大手出版社8〜10社の文庫本を中心に買い、新刊案内のほか、期間限定のフェアや有名作家の全集などを告知するチラシも集めている。時折、古本屋を巡って探し、コレクションには1970年代のものもある。
田だ、ここ数年、新刊案内のチラシに力を入れる出版社が少なくなっていると感じている。「出版不況の影響か、かつて幾重にも折られていたものが、今は見開き1枚のところもある」と寂しがる。
同じ趣味を持った人を探す目的もあって、現在、インターネットのブログでコレクションの一部を紹介している。まだ、共通の楽しみを持つ人は、未知かっていない。「趣味を分かち合えたらいいですけど、あくまでも自己満足です」
新刊案内をああ詰める目的でミステリーやノンフィクション、歴史物など、毎月購入する本はどうしているんだろう。「全部読んだあと、ほとんど知人に譲ってます。最近は歳で今のペースがつらくなっていますが…」と笑う。読書は手に入れた新刊案内に思い出を刻む作業でもある。


    (学芸部 栗原淳司)

以下の記事は2010年3月10日エントリを移したものです。上記の新潟日報紙上で「文庫チラシ蒐集」に関するわたしの趣味が紹介され、漫然と続けていたブログを引き締めようと、あらためて記したものです。