角川学芸出版編 俳句歳時記 第四版増補 冬

俳句歳時記 (冬) (角川文庫 (か3-4))

俳句歳時記 (冬) (角川文庫 (か3-4))

漱石忌
十二月九日。文豪夏目漱石(一八六七〜一九一六)の忌日。本名金之助。東京生まれ。東京帝国大学英文科を卒業、英国留学から帰国後、東京帝大で教鞭を執る一方「ホトトギス」に「吾輩は猫である」を発表し、一躍文壇の寵児となった。後に東京朝日新聞社に入り、同紙に多くの小説を発表した。正岡子規高浜虚子と交流があった。大正五年宿痾の胃な病のため没。作品は「坊っちゃん」『三四郎』『それから』「漱石俳句集」ほか多数。

 漱石忌戻れば屋根の暗きかな  内田百ケン(間の日が月)
 書斎出ぬ主に客や漱石忌  長谷川かな女
 漱石忌余生ひそかにおくりけり  久保田万太郎
 うす紅の和菓子の紙や漱石忌  有馬朗人
 菊判の重きを愛し漱石忌  西嶋あさ子
悪相の魚の美味なる漱石忌  菅原閧也
 塩羊羹厚切りにして漱石忌  中島真理
 新聞に雨の匂ひや漱石忌  片山由美子

百鬼園先生や万太郎先生だと、法事や墓参の帰りの暗さやうすら寒さ寂しさが垣間見れるが、羊羹を切ったり魚を煮たりでどこが漱石なのか分からない作品もある。百鬼園先生が湯河原に借金に出かける随想、よかったな。まあいろんな分野にお弟子さんを配列し、現代文学までオマージュ・パロディ作らせるだけの肺活量の大きな作家には脱帽してます。とはいってもいまさら文庫で再読はないか。