早川書房 ハヤカワミステリーワールド9月刊 長島槇子 吉原純情ありんす国

吉原純情ありんす国 (ハヤカワ・ミステリワールド)

吉原純情ありんす国 (ハヤカワ・ミステリワールド)

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%95%B7%E5%B3%B6%E6%A7%87%E5%AD%90

Wikiに著者に関して記してありました。わたしもはじめて知った作家。遊郭関連の書籍を上梓していて、まあそちら方面の知識が豊富な方とみました。
ミステリーとして云々より女流作家が輪姦強盗殺人事件の現場を、まあこんなふうに(2度も)描くあたりがどうにもよくわからない。戯作というか当時の瓦版調のおどろおどろのほうがいいだろ、ドラマとしても輪姦強盗殺人犯どもが同じ廓で女買いながら殺人の機会を窺う(第2話)とか、バラバラ死体を捨てにゆく(第1話)とか、スリリングな展開であるはずなのにサスペンスをもうひとつ生かしていない。第3話など逆に倒叙ものとして殺人犯の破滅の道を(おぼろの推理と同時進行で)描いてほしかった。

…前略
千歳屋は京町の半籬─交じり見世とも呼ぶように、高級な昼三の花魁から、揚代ニ朱の娼妓まで取りそろえて置いている。
滝川は昼三の花魁でも、最高位の「呼び出し」から四つ下がった昼三だった。入山形に星一つ─揚代は、部屋持ちの同じニ分だった。年が明ければ二十五歳、吉原の遊女としては年かさだ。
…後略
 第一話 足抜き ニ、千歳屋 27ページ

まあね、そんなふうに江戸時代の遊郭に関しての知識が分かってもなあ。でも一流の花魁を身請けするには…

…身代金は、花魁の年季までの稼ぎを見積もり、前借金に加算する。呼び出し級の花魁で、十九歳なら、一千両は法外ではない。
身請けの費用はそれだけではない。謝礼の金やら祝いの品を、お世話になった引き手茶屋、置屋、船宿や芸者衆、幇間、遣手や世話をした女衒にまで渡してやるのが慣習で、身請けは花魁一人だけの祝い事ではないのである。祝いの宴でのご祝儀や、菓子、反物などの引出物もバカにならない金額になる。…
 第三話 花の嵐 一、心中仕立て 174ページ

まあ、何ともいえないです。ニ八そばが16文。一文25円で400円か。4000文が1両でそば屋のレートでいけば1両=10万円。最高美人のAV女優を愛人にするんでも、現代日本、一億はいらんだろうし、これってすこし変ですね。主人公のおぼろと若旦那徳治郎の掛け合いも、もうすこし理解に苦しむ…っていうと結局物語をまったく信じてなかったわけだろうな。まあ、今後に期待すべき作家ということですか。