ハヤカワ文庫JA6月刊 長谷敏司 あなたのための物語

あなたのための物語 (ハヤカワ文庫JA)

あなたのための物語 (ハヤカワ文庫JA)

残念な一冊。カバー裏や帯に記された梗概・レビューに悪くだまされた。仮想人格に小説の執筆をさせた余命いくばくもない天才科学者…という惹句でしょ。それでもって冒頭のぶざまな主人公の死だから、まずこれがコンピュータが書いたぶっきらぼうな第一の小説かと思ってしまった。
メタ小説というんでしょうか、身も蓋もないロボットの書いたぶっきらぼうの小説がいれこになって、徐々に死に近づく科学者の意識とシンクロするとかしないとか、そういう「あなたのための物語」かと勝手に思ったわたしが間抜けでした。するとつまりこの小説のどこがSFなのかな。《wanna be》の死後にコンピュータ上の仮想人格との“ちょっときつい対話”があるけれどあそこがSFなのかねえ、納得いかないなあ。