東京創元社6月刊 フェルディナント・フォン・シーラッハ酒寄進一訳 犯罪

犯罪

犯罪

序は不確定性原理のハイゼンベルグ「私たちが物語ることのできる現実は、現実そのものではない」。跋にはマグリットの絵画と同じタイトル「これはリンゴではない」が置かれていて、テキストをがっちりと規定し、それはそれで美しい。ラストに「エチオピアの男」を置いたのも編集的に正しい。日本人は白土三平ざしきわらし」があるのでまあ、もの凄く感動はしないが(他にもありそうなんだが思い出せない)、それでも裁判の妙も含めてほっこりほのぼのはしました。
他の短編、さあどういえばいいのか、日本人のタナタさんは本当にいらっしゃったのだろうか、ジャパニーズマフィア関連の方なのかな。「棘」のフェルトマイヤーさんが20年以上配置転換されずにいても、誰も何も言わないのね、そのへん、大層ドイツ人っぽい。法律に関する考え方なども、ドイツ的に頑固で、だからそれらをうんざり読んだあとの「エチオピアの男」がぐっと来るんでしょうね。