購入したのは椎名誠「銀天公社の偽月」

銀天公社の偽月 (新潮文庫)

銀天公社の偽月 (新潮文庫)

春に購入の集英社文庫「砲艦銀鼠号」で登場したつがねがもっと悪辣に(切実に)なって出てきて、そんな巧みさは好きです。でも物語のずぶずぶさというか、読者の苛立ち度まで考慮のうえなのか。先日は呆れたなんて記したけれど吉村萬壱「バースト・ゾーン」が描き出した“重苦しく苛立ちに満ちている今”─モロイというかベケット的了解か─を読者に委ねすぎていないか。酸素が足りず喜びのない世界に生きる苦しさは十全に伝えきれていて、でも伝達の容易さ(漢字造語に委ねすぎみたいな)の度合いと“再構築させなさ”がピタリ反比例して見え、ワールドのほころびが広がりそうで怖い。