文藝春秋 08年11月刊 よしもとばなな 彼女について (怒りのネタバレ感想文)
- 作者: よしもとばなな
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2008/11/13
- メディア: 単行本
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小説なのかよ、駄目だろこれって?ものすごく不愉快で苛立ちの読後感しかない。著者にとっても「早くに消えてほしい失敗作」でしょう。
読んでいる最中に持った感慨も、どちらかというとネガティブなものだった。村上春樹が「ねじまき鳥…」で苦悩し逡巡し途中で幾度か諦めかけつつさいごはゲンナリと記述した全3巻の換骨奪胎をこんな短さで比喩や情景描写など小説的技法もほとんど使わず、ドラマツルギーも適当でこりゃ省エネですねというのが読中の感想だったけれど、まさか主人公の由美子さんが14歳で死んでいたというのがオチとは驚き、呆気にとられたままです。
もちろん主人公の由美子さんが死んでいてもちっとも構わない。死者の魂が幽霊としてでなく謎をさぐるでもなく、死者としてたんたんと時間や空間を漂うだけの小説でも悪くないと思うよ。イタリア人の恋人がいたり都内にアパート借りていたり二日酔いだったりコーヒーの味が分かるひとだったり、そんなふうに一般人と同じように年齢を重ねる死者がいてもいいんです。でも最低のルールとして主人公の境遇はきちんと読者に伝えるべきでしょ。そのうえで新しい死者であるおばさまと、謎解きをするとかではいけなかったのかな。
クリニックの事務員の顔がお手伝いさんの顔と同じだとか、クリニックの庭と惨劇のあった自宅の庭とが相似形だったり、そういうのがヒント?それでもいいんだけど、由美子さんが死者であっても小説として間違ってはいないはずだ。
地縛霊となった由美子さんの霊を昇一くんが呼び出す─彼女の死の原因である降霊術を再度行なう─ためにはそういった具体的なツールが必要っていうなら、やっぱりそれは読者にもうすこし丁寧に説明しないとね。書下ろしってことだがばなな先生ほどだと編集の人はもう文句だとか推敲をお願いするとかできないんでしょうか。まあ、いずれにせよ本当は無視黙殺が相応しい作品だな。