幻冬舎文庫08年8月刊 奥田英朗 ララピポ 

ララピポ (幻冬舎文庫)

ララピポ (幻冬舎文庫)



ネタバレというか。映画化ということなら始めからわかっちゃうわけですけど、第1話のフリーライター、体重100キロのキモオタ体型と気付かず読み進んだ。デブの小百合さんとできちゃうわけだが、ガリガリに痩せていたほうが画像的にはいいんじゃないか。
とまれそれにしても、性愛の時代というのか、スカウトマン以外の登場人物たちは現状を打破しようとかの上昇志向を持ち合わせず、侘しく貧しいセックスに生き甲斐めいたものを見出すしかない時代って悲しいですね。
戸梶圭太の作品のほうが下流の日常描くのはうまいと思うが、こちらでも情けない事件が連なって、読書の喜びは多いにありました。でも、連作短篇形式が合っていたのかどうかはちょっとね。グランドホテル形式の方がどたばた危険な長編になったと思うのだけれど、もちろん失速せずにフィナーレを迎えたのは慶賀の至りですけどね。
「最悪」だとか…タイトル失念、鉛筆削り会社の御曹司とか、いくつか読んだこの人の長編って視点の変換タイプで、スピーディーだしメリハリもついてはいるけど、なんだかこう細切れ感が惜しいなと。
ゴミ屋敷(第3話 Light my fire)にかんしては、隔靴掻痒というかもっと情景心理ともに描写がほしかった。あれだけのシェチュエィション、充分長編になれたでしょ。投げやりな主婦の自堕落さには婆さまの死体というオチがあったのかと読んでいて嬉しくなった。この浅ましい読書の喜びをもっともっと大輪の花にしてほしかったなあ。
ララピポってタイトル、アロットオブピープルだそうです。そうか、そうだね、そう聞こえるね。