文藝春秋2003年8月刊 戸梶圭太 CHEAP TRIBE ベイビー、日本の戦後は安かった

CHEAP TRIBE-ベイビー、日本の戦後は安かった

CHEAP TRIBE-ベイビー、日本の戦後は安かった

カフカ式練習帳」を読み続ける気力が萎えたので感想文を書けません、ベイスターズが負け続けているせいで。著者保坂氏は形而上学に逃げ込み辛い人生から身を逸らそうとしているのかもしれない。
「CHEAP TRIBE」は文春文庫ででも出ているけれどまあここは単行本のほうでAmazon貼っておきます。“TRIBE”という単語、けっこうアレというか差別関連なのか、部族というだけでは感じない強いオーラを放つ単語なんだろうね、翻訳サイトできちんとした単語として提出してくれない。
03年は戸梶圭太畢生の名作「燃えよ!刑務所」が上梓された年なのです、あの歴史に残る(はずだ)名作に比べるとこちらのエンタテインのレベルは相当低い、エピソード1の炭鉱悲話は「骨餓身峠死人葛}をかるく蹴飛ばすほどの馬鹿馬鹿しく下品な悲惨さでいい味出してるんだけれど、同じ主人公で40年を貫くのは無理があったか読んでいてそうとう辛い。無学歴で幸薄く、炭鉱で陰惨な少年時代を経たせいで犯罪に走るしかない主人公栄吉の彷徨を50年も追うんだったら、中途から同時代を生きたわたしとしては「裸の十九歳」の永山則夫を昭和の生き証人としてこの際一緒に栄吉とシンクロさせてほしかったかな。
たとえば連続射殺魔が実は栄吉で、クソみたいなチンケな犯罪で収監中に模倣犯永山則夫が捕まっちゃい主人公が“無知の涙”を完結させたがるとか…だめか。あとさシャブ中通り魔は川俣軍司がお手本だろうがさすが小説的にスケールアップさせちゃっていて読んでてちょっと面食らった、も少し昭和はチープでブリーフ姿がお似合いではないか。まあでも昭和クロニクルとしてトカジらしい笑い(けた外れに陰惨なのがいい)のパワー不足がちょっと残念、でもまあこのころの筆力(というか肺活力だか背筋力だか)の痛ましいほどのみにくい強さに羨望の溜息がでます、もっと下品に復活してよ戸梶圭太、ウシジマくんくらい軽く超えて面白おかしい陰惨を見せてください、待ってます。