購入したのは 西原理恵子 パーマネント野ばら

パーマネント野ばら (新潮文庫)

パーマネント野ばら (新潮文庫)

帯に曰く「ラストは涙が止まりません」だそうだが、本当か。
わたしゃ「ぼくんち」ラスト3話で大いに泣いたし今でも泣けるぞ、凄いんだぞ思い出しただけで滂沱たる涙があふれるんだぞ、神子ねえちゃんがニ太に「…もらわれていきなさい」と背中で語りかけつつ庭の土を掘り続け、あのときのニ太の黒目があんなに寂しく、じいちゃんの舟が接岸し朴訥な漁師の掌がニ太の肩に乗ったなら大きな黒目は細い一本の曲線になる。コウイチくんが漁る湾を出るポンポン漁船の縁でラストに大きく「こういうときは笑うんや」で、家族の崩壊と再生の(萌芽だけど)長編ドラマを堪能した喜びにため息といっしょに大量の涙を放出する。今でも、思い出すだけで放出できる。それに匹敵できるのかい?
「こういうときは笑うんや」について一言。NHKトップランナー中にもこの言葉が引用してあって、でも母を失ったニ太に神子ねえちゃんが暴力的に命じた駒(シーン)だけを提出しては西原のロマンを語るに不足だ。せめてラストと繋がると付け加えてほしかった。一太も神子ねえちゃんも失ったニ太が自分に向かって“こんなときは笑う”しかないという成長譚が痛くて辛かったのだから。
「パーマネント野ばら」は泣けないよ、これはいけちゃんと同じでしょ。野原でおもちゃをなくした少年に「あと40年したら、おばちゃんとキミはもっぺんであうの、おぼえててね」そういうことなのね、いけちゃんって。ラストでわたしは泣けませんでしたが、よい読書ではありました。