中公文庫08年2月刊 粕谷知世 ひなのころ

ひなのころ (中公文庫)

ひなのころ (中公文庫)

昨月、戸梶圭太の新刊文庫「宇宙で一番優しい惑星」ではなくこちらを購入した。なんという失敗であったことか。おもちゃのチャチャチャみたいで、深夜になると人形たちに生命が宿り少女と魂の交換をするというファンタジーではどうしていけなかったのか、いまだにわたしには理解できない。
ドラマ好きというより、TVドラマが好きな著者がゲンナリするほど臭いドラマを詰め込んできて辟易。もちろん子供のころに友人を交通事故で亡くしたという人物の心など一般論としても分からないわたしだから「こりゃないぜ」と憤慨してみても、水掛け論にしかならない。まあ、11歳の主人公にはこりゃ濃すぎる体験だし、だから咀嚼できないのは理解できるが、罪の意識の希薄さが「祭の夏」以降にもなさすぎる。つまりはなんというのか少女の記憶や意識から遠いものとして排除されてるみたいな描かれ方にもなっていない。
なんというのか、周囲の庇護に甘える少女がその柔らかな優しさに怒っている(罪を償いたいのではなく自分を成長させろというような)みたいにしか読めない。
ま、だからすこしTVドラマに無理があったってことでしょう。怒ってばかりのおばあさんとか父母も不和だし弟も不機嫌だし、逆にいうとそういう部分はテレビドラマ的に解決させてほしかったところだ。
なんにしろ、子どもなんてぼんやり過ごしたようなほうが想像力なんぞを含む人間性や理性が豊かになるのでは、読み終えてそう思った。