文藝春秋8月刊 堀井憲一郎 ホリイのずんずん調査 Horii's Zoom-Zoom Invesutigationかつてだれも調べなかった100の謎

久々Amazon利用で購入。週刊文春で直接読んだ記事もあるし、ずんずん調査単行本「この役立たず!」で読んでた「キョロちゃん」とか「文庫本目録」とかも入っているしで感慨深いものでした─「この役立たず!」も「ホリイの調査」も、もうわたしの段ボール書庫から消えてしまっていて、少し寂しい。「ホリイの調査」で高校駅伝の美少女度を調べるというのがあったけれど、あれちょっとコードに引っ掛かったのか記述が中途半端だったよね─あれ、個人名もNHKで全部言っちゃうんですけど。
ま、それはともかく「ディズニーから勝手に学んだ…」という文庫書下ろしを昨年読んで大層脱力はしたけれど、ずっと昔からファンですし年下だけど師と仰ぐべき人物と思っています。でもってこちらの本、のっけの銀座のすし屋調査がいいですね。里見真三が巨大本「すきやばし次郎旬を握る」でグルメだのバブルだのスノビズムなどの脱構築を図ったのが前世紀97年、ずんずん調査も同じ年にちょっと違う手法で偶像破壊を行っていたのですね、やっぱりいちばんインパクトのある記事です。でもって後半になるとでもわりと「…勝手に学んだ…」的なスタンスで自らの倫理を開陳するだけみたいな陳腐な作品もままあり、すべてが快適な読書ではなかったかな、あとゴシックで記された現在からの記述はほぼ蛇足ですね、エクスキューズにしか見えない。
「馬鹿が止まらない」中の白眉というか“Someone Like you”みたいな卒論の話と大学まで歩いた話、天津丼と餃子を食べたら電車賃が足りず交番で借りた話、ビーサンで代議士にインタビューした話とかその他、なんかこう間抜けな大学生が大概ハマる落とし穴ですトラウマですをヤサシイ私小説仕立てで解放してあげてくれている山口瞳の後継者みたいな立ち位置かと思ったんだが、なかなかこう主義だの倫理などで、こうちょっとこのひと譲れない部分がちょっと強すぎるんじゃないかと残念さがどうしても残る読書体験でした。