購入したのは小手鞠るい「ウッドストックの森の日々

([こ]1-2)ウッドストックの森の日々 (ポプラ文庫)

([こ]1-2)ウッドストックの森の日々 (ポプラ文庫)

アメリカ東部の村での暮らしというものは、まあほとんど知らないわたしとしては、そこそこ楽しく読めた。満天の星というやつを田舎出身のわたしのくせして知らぬということはそうとう恥ずかしい。なんというのかそこまで目がいかない人、感受性の鈍い人と自分を規定しないといけないのが淋しいからか。天の川見たことないものね。
アメリカの職人さん(暖房のメンテナンス屋とか)はお喋り好きだが腕のほうはなっちゃいないとか山のような契約書とか、筆者夫妻はインドヒッピー旅行の体験者で(ということで何かがわかる世代ってか)もうちょっとで本物のホーボーになっちゃう境界(これは危ない、と踏みとどまった)までいってきたとのこと、その他フラットな文体が著者の生き方をあらわしていて、気分のいい読書時間を過ごせた。
まあでもね、けっこうセンチメンタルな世界観・倫理観の持ち主な作者に、小さくブーイングしたくなったりも。坂東眞砂子のリアリズムの幾分かでも持てぬと作家としては大成できないかと、まあどうでもいいことだけれど、反実験動物とか反狩猟とかの主張は、本書の記述だけだと駄々っ子でしかない。それはともかく映画「ウッドストック」で、煽動とか群像の怖さとかなんだかいろんなことを学んだようなわたしです、そんな場所の近くに住んでいるヒッピーの心を知る日本人女性作家という存在、たぶんわたしの心を豊かにしてくれるすてきな存在だと思う。