文春文庫3月刊 高山なおみ たべるしゃべる

とても不思議な料理の本。各編の分量から、まあエッセイというジャンルになるんだろうが、とてもいろいろ違う、まあ今まで読んだことのないタイプのレシピ本、料理所書で読みごたえがあった。読むのが楽しいというと堀井和子の料理エッセイとかわたし嫌いじゃないです、あちらはライフスタイル向上委員会というか、パンを焼くとか料理を作るとかが“かっこいい”というように小気味に記されている。でもって、高山なおみはブログ「日々ごはん」のひとでわりとほっこり自然主義というのか、山口瞳のエッセイみたいに読んでいました。高山なおみ公式ホームページ「ふくう食堂」のアドレスは以下に。「日々ごはん」続いております。

http://www.fukuu.com/

でもってこちらの「たべるしゃべる」は、そういう日々の暮らしとは違う、でも自然主義というのならここまですべきかと感じさす、まあレシピ本の新たな地平が見えた気がした。自家製プリンを作る妻とライトバンで移動販売する夫の国分寺にある家にまで出向き、料理を作り間抜けだったり驚いたりみたいな、夫妻の話を聞きながら彼らとご飯を作り、一緒に食べるというのが、第一話。それ以降もまず買い物に出かけるとか、ゲストが作ってくれた焼そばに興味を持ち、製麺所まで散歩がはじまるとか、カメラマンの家で料理を作ったのにやっぱりカメラマンは食べる前に料理を写真に撮り始め、時間のロスにイライラしたりとか、まあそういうプロセスやゲストの人となりへの配慮とか、まあつまり誰かのために料理を作るに当たりレシピ本を手にした一般人が、たいがいやること考えることが詰まっているのですね、いや相手のフィールドで調理するという緊張感はこの本ならではだろうな。
レシピ本としての実用度は、もちろんまったく高くはないのだが、でも読み進めるうち時々贅沢な時間をヴィヴィッドに感じ、それはとても心地の良いものだった。