集英社文庫11月新刊 「『ジューシー』ってなんですか?」山崎ナオコーラ

山崎ナオコーラの本を読むのは初めての体験。「他人の性癖を笑うべきではない」と本来考え実践している石丸ですので処女作のタイトルにはそうとう違和感があり“この人って基本、他人のセックス笑っちゃうんだろうな”と思うと不愉快でそのままパスした。でもこのたびは書店でぱらぱらめくって「読みやすそうですね」という第一印象。行間が広く改行が多く会話も多くて本当にあっという間に読み終えた。もちろんそれはそれできちんと作為が無ければできない仕事ですし、読み終えて「何にもない」ということもないので、わりと好印象でした。山崎ナオコーラさんのホームページ「微炭酸ニッキ」は以下に。

http://www.enpitu.ne.jp/usr/7614/

ホームページ中11月19日エントリにこの本に関するひと言が載ってます…があれれ?

『ここで消えない会話がある』を改題して、文庫で出版します。
(タイトルを変えただけなので、ご注意ください。
単行本と内容は一緒です。
文章を細かく直しました)。…以下略

あら、そうなんですか?文庫本自体に改題に関しては一切記してないですぜ。ま、でもタイトルに関しては“ジューシー…”の勝ちですが、でも仁義はきらなくちゃね。新聞のテレビ欄の整理をなりわいにしている配信会社6人の群像劇で、読み終えてテレビ欄の整理という仕事がまあ大変だということは理解できた。

魚住と岸と広田は契約社員なので、名義上は、この会社の社員ではなく、別の会社のスタッフということになっている。同じビルの一階下、九階の隅っこに六十歳過ぎの社長が「マイルドスタッフ」という社名で経営している。…以下略

正社員と契約・派遣社員との格差とか仕事上のいろいろとかが、まあ随所に描かれるが、それがこのふわりとした小説の核心ではなく、屈折やトラブルや変な同僚なども、それぞれ自然な位置で職場の風景としての役割を演じている。視点の移ろいも自然でなめらか、でもって読み終えてのあまりのあっけなさに、ちょっと麗しさも感じられた…って、もちろん誉めてるんですよ。