文藝春秋10月刊 山田詠美 タイニーストーリーズ

タイニーストーリーズ

タイニーストーリーズ

 

いやはや、この本読んだせいでそれから半月全然、読書したくなくなった。今年の夏の暑さも大層読書の阻害にはなったが、あちらは物理的な壁、でもこちらはもう本当に心理的なダメージとなりました。この本、太くて厚いピンクの帯があからさまに恥ずかしい。帯に曰く。

デビュー25周年に到達した、誰も書いたことがない、短編小説の豊穣
これぞ短編小説の粋
言葉のしずくが 心に落ちれば 世界は色を変える

残念ながらこの本からはなんお豊穣も粋も感じられなかった。なんだよこのフェラチオ小説(催涙雨)。おじさん、こんなのちっとも嬉しくないな、こんな風な展開でフェラしてほしくないです。ホームレスが算数得意で何が悪い(微分積分)。…勉強ができないもそういえばひどかったな、ひとりよがりの名人だね。
ファルスというのか小噺なのか、何だか小さい教訓が置かれていたりで、読んでいるさなかにそれほど不快感は持たず、時々微笑や哄笑もあったのだけれど、全部読み終えての感想は最悪の苛立ち。文学の毒というのではない、本当にこれ、人生の毒です。もちろん社会的に社交的にもこういう不遜な毒もあるべきでしょうが、自分が地雷を踏みたくはなかった。読了後2週間、並行して読んでいた高橋源一郎山本兼一大森望も、ほんとうに一ページも読み進めていない。何か中和剤がほしいが、何がいいんだろうね?怪盗ルパンでも読んでみようか。