講談社文庫07年8月刊 大沢在昌 夢の島

夢の島 (講談社文庫)

夢の島 (講談社文庫)

ははあ、去年のミステリーフェア時刊行されたのですか。
なんかこう書棚に置いたままでだらだら1年読めなかったし、また楽しい読書でもなかった。99年9月双葉社刊と、奥付前に記してあって、前世紀だとまだ大沢作品惰性で購入していたような気もするが、そうでもなくて書店で値踏みしたかなあ。ネット上にバイオグラフィーくらいはあるだろうが、なんだかそういうので確認する気にもならない。先日書店で幻冬舎から上・下2巻の「黒の狩人」平積みされていましたが、食指も動かず。
いつからか大沢の長編には水増し感、スカスカで内容の薄さをひどく感じるようになり読書が苦痛となった。新宿鮫の最新刊は「狼花」か、ラストのドンパチも呆れ返るが乱暴にストーリーを膨れ上がらせただけみたいなバブルのあざとさに興醒めだ。「毒猿」をワクワク購入、深夜までむさぼって読み、深夜読み終えたなら翌朝まででもういちどなぞって読んだのだ、あの興奮はもう帰ってこないのね。殺伐と痛切と慟哭とが濃厚にシェイクされた中編を大沢は選択すべきだ。そうでないならも少し重層できめの細かいシーンで(情報じゃないよ、ほしいのは抒情だ)長編を保たせてほしい。初期の新宿鮫カッパノベルス」でも薄いほうだったでしょ。あの長さでいいんだよ。
この「夢の島」もおなじこと。20代半ばの世間知らずが主人公の設定や急な父親の登場が悪いのではなく(いや、充分悪いがそれより)、きちんとした下書きのないまま、膨れ上がらせただけの骨格のない長編小説だと、読者にあっという間に見抜かれる間抜けさが悲しいのです。