中公文庫 チラシ復活…ってなんだかなあ

ま、今までの経緯から類推するに、このたびもいつまで続くことやら。たぶんいじめられキャラの文庫編集者が周囲からけしかけられて、チラシ担当にさせられ、当人が配置換えになるまでの短期間、サービス残業で作らされる─のではと邪推しているチラシ蒐集家はわたしだ。
2006年春にいったん消えてなくなった中公チラシ、冬前に復活したけど昨年春でまた消えた。中公文庫BIBULOって不思議なチラシに関して語ることは中公の社員でさえタブーじゃないかと、わたしは考えている。あれって、どう考えても中公と読売との何か確執ですよね。教養をとるか売れ線を突っ走るかで、生え抜きと進駐軍がチラシ戦争をやらかした。残ったのはいわずと知れた「読むだっちラリー」だったってわけですね─さすが拡販の鬼の読売だ。
まあチラシ戦争はともかく、中公文庫。わが青春期の読書体験と文庫創刊と相当かぶっているわけです。中学生の頃、一般書店で棚に並ぶ文庫といえば“岩波”“新潮”“角川”の3つ。ちょっと特殊で“旺文社”“創元推理”“教養文庫”“保育社カラー文庫”ってところか。現在ではもうない文庫も3点あるのだわね。
そんな寡占市場に暫時、大手出版社が参入してきたわけです。講談社文庫は1971年、中公文庫は73年、文春文庫は74年、集英社文庫は77年、。このあたりが第3次文庫創刊ラッシュというやつですね。ハヤカワ文庫はちょっと難しいところがあってウィキペディアでみなさんおさらいしてください。ハリー・クレッシング「料理人」とかアーサー・ヘイリー「0-8滑走路」とか「マタンゴ」の原作者ウイリアムホープ・ホジスン、ボーダーライン三部作とか、初期のハヤカワ文庫もそれなり味わい深い趣があるが、当時(35年前には)気が利かない、本来文庫化すべき作品をネグっている不埒な奴(マクリーンとか楽しみにしてはいたけど)と、ハヤカワの商法を忌み嫌っていました。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%A4%E3%82%AB%E3%83%AF%E6%96%87%E5%BA%AB

ハヤカワ以外の第3次文庫世代─サンリオはどこだ?福武は何処?朝日文庫ってどこにある?─その他の疑問をお持ちのみなさまはどうぞ「文庫本大好き」サイトへ飛んで、各自念入りにお調べください。

http://www.tomita.net/

岩波文庫全巻読破みたいな知的な管理人が監修している、読書好きにはとてもすてきな空間であります─当ブログもそちらで紹介されたことがあるんですよ。
あれっ、中公文庫はどうした。北杜夫庄司薫…ってお2人が中公のスターだったかも知れないがどちらも単行本で読んでましたっけ。なんとなくだが紙質が悪いっていうのが中公文庫のイメージだったような気がしてます。野坂昭如「骨餓身峠死人葛」。結城昌治「軍記はためく下に」。手塚富雄ツァラストゥラ」。折口信夫死者の書」─ああ、けっこういいイメージが残ってるね。大学生だったころ、新潟に帰省する電車の中で分厚い「レイテ戦記」を一生懸命読んでいて記憶は今も強く残っている。
中央公論社の記憶はまあ、どくとるマンボウが強いのだけれど、高校生になってからはクスス、「世界の名著」「日本の名著」シリーズを貪り読むふり…ってか結局よくわかんないんだけど読んだふりみたいで、学校図書館に並ぶそれらを無理して睥睨するふりみたいな、忸怩たるしょっぱくて情けない思春期背伸びしていたあたりの記憶が一番強いですね。でもってウィトゲンシュタイン「論考」とかあと本居宣長「呵刈葭(あしかりよし=かかいか)」とか、ウフフ、うれしいね、いまでも読書の楽しみみたいで心に残っていて、それは文化産業としての中央公論社の、最高の功績。─だから中公文庫編集さんへ、応援するからチラシをこれからも出し続けなさい。チラシが挟まってるうちは毎月一冊づつ買うよ、わたしは。