購入したのは「変な学術研究 1」 

さて、著者のエドゥアール・ロネについてはあまり詳しいことはわかっていない。原書の裏表紙によると、元技術者で、フリーの科学記者を経て、現在は日刊リベラシオンの文化面の記事を担当しているということである。著書にはほかに「法医学」に関して面白いエピソードを集めたViande froide conuichons(まぬけな死体)がある。

   「変な学術研究 1」監訳者高野優あとがきより抜粋

序文でロネさんが日本人学者3人による「はとによるモネとピカソの絵画の識別」という“わくわくする”研究を一例としてとりあげてくれたおかげで、興味が湧いてはきたけれど、かといって雑学博士のレパートリーを増やすまではいきそうにないのは、やっぱりロネさんアメリカ人でも日本人でもないせいではないかと今では思ってます。エスプリのみで一冊亘っているようで、そうなると好悪が分かれるだろうな。

(様々な遺伝子改良羊の研究が進み)…遺伝学のおかげで、人は皆、自分のために生きられるようになるのである。
こうして、科学は様々に羊たちの欠点を補ってきたが、おそらく将来の目標は羊毛を取るにも、羊肉を生産するにも、羊そのものを必要としなくなることだろう。そうすれば、これまでおとなしく人間の役に立ってきた羊たちは、晴れて野生に戻ることができる。現在、科学はこれだけ進歩したのだから、おそらく羊たちだってそれを夢見ているにちがいない。

   「2・おあつらえの羊」より

まあどこかで別役実と通底しているわけだけれど、何だか一読者としてわたし、歳を経るにつけ「健康」一般に読み物がすこしずつだけどシフトしているみたいな気がしないではないんだってこれはみっともない、フゥッとため息だ…。