文藝春秋の新刊 2003・10 「秋の月」 ©大高郁子

きれいですねえ。日本画のような筆致と色使いに惹かれるな。
山肌全部を遠近法無視でか細く白くでも硬質そうな幹と枝がびっしり描かれていて、そのきめ細かさが美をきわだたせているのだけれど、でもその美しさの本質は緻密や精緻という形容で括れないのだというのはすぐに分かる。作品から匂い立ってくるのは画家の筆致の丁寧さなんだな、そして正確を念じて筆を動かし続ける真摯さではないか。作品をはぐくむ最中にある人の大きく長い息遣いが、月夜に照らされる木々の一本一本をきわだたせ浮かび上がらせている。
リーフレットを開くと、ははぁ大きな文字で「ヤンキー母校に生きる」が。TVドラマ原作ですか。残念ながらドラマも知りません。「青春とはなんだ」「金八」その他、そういうドラマってじつは嫌いじゃないんですけど、21世紀だもんな、ただの熱血ドラマじゃないんだろうな。すんません、どの本買ったのか覚えていないぜ。