ご自由にお持ちください 新潮文庫

A4サイズ2枚を二つ折りした小冊子。高見浩と養老先生との対談が冊子のすべて。裏表紙でロードショー案内とハンニバルライジング以前の作品紹介。
わたしは「羊たちの沈黙」しか読んでません。正確ではないか、ブラックサンデー、映画があまりに面白くて原作を読んだのはいつのことだ─とはいえ、わたしも映画をナマで観てない。あの時代クズみたいなことがいろいろあったんですね。ブラックサンデーを人身御供にしておいてアンソニー・クインアルジェリアの英雄に扮した映画が公開されて、こちらはテレビで見たんだが…ああ、そういえばこんなことも前のダイアリーに記してたような。…もう、嫌だねえ、辛いねえ。
対談、どうなんだろうか、ただの広告媒体として消えちゃうんでしょう。

高見 こんどの作品ではハンニバルの叔母である紫夫人など、母性的な要素が濃密に描き込まれているのに比べ、父性的要素が希薄だと思いましたがいかがでしょう。
養老 キリスト教原理主義に絡んでいるのでしょう。先のベストセラー「ダ・ヴィンチ・コード」は、キリスト教=父性原理はどこから生じたか、つまり教会の出発点から始まっています。アメリカは父性原理の時期を過ぎたという暗黙の認識ができたのではないでしょうか。「ダ・ヴィンチ・コード」が売れ「ハンニバルライジング」が書かれたということは、社会にかけているものに気付き始めた、即ち成熟してきたんですね…(後略)
高見 ハンニバルが亡きミーシャを相手に、この世には神は存在しないという事実に、ぼくらは心の平安を見出しているね、、と語りかけるところがありますね。おそらくハリスは、キリスト教を信じていないこういう少年がつちかうに相応しい教養の素地があるとしたら、どういう伝統文化だろうと考えたと思います。その結果、キリスト教の影響の及ばなかった日本の伝統文化に着目したのではないかと思うのですが。
養老 本当にそうですね。一神教の文化は、イスラム教を含めて世界の三分の二といわれてます。日米間には戦後これだけの因縁があったのに、日本は案外その影響を根本的には受けていません。だからこそ作品に日本文化を著者は入れたのでしょうか。

って、疑問形で終わってるけど、さあてこんどのハンニバル、どんなストーリーなのかな。このあとの対談では食人について語っていて「羊たちの沈黙」しか読んでないわたしだと、何のことだか分かりません。