乾くるみ 「イニシエーション・ラブ」読了
石丸さんというすてきな悪女が副主人公で出てくるという、そのことだけでも魅力的なドラマでした。小林信彦の唐獅子にカップリングされた短編「ジェリーズ(英語スペルがタイトルだったかも)」の主人公が石丸だったな。あれはモービーディックのイシマニエルのモジリだったか。
ほかにも石丸という姓のキャラ、小説で見かけたような記憶はあるような気がするが覚えていないものだな。つかこうへいのエッセイには石丸謙二郎が出てくるけどね。
石丸さんは魅力的な都会の女性で、田舎出の一人称主人公を誘惑・征服するまあ敵役なんだ。彼女に夢中の主人公も、きっとこの先遠からず彼女に飽きられ振られそうで可哀想ではあるけど、小説全体を読んでしまえば、主人公に同情もできないか。
トリックに関してはちょっとなんともいえませんね。トリックじゃないんだし。とはいえカバー裏に記された「必ず2回読みたくなる」という惹句は、処女(童貞)喪失シーンだけということになるわけだし、まあもちろん、そういう意味ではキャッチフレーズに「間違いはなかったなあ」ということになるでしょうか。