文春文庫2月刊 戸梶圭太 なぎらツイスター

なぎら☆ツイスター (文春文庫)

なぎら☆ツイスター (文春文庫)

最後のどんでん返しだかは、うーむどうだろ不要だったのではなかろうか、ま、もちろんモール駐車場でのカーチェイス。逃亡した犯人がだれかあの時点で分かってしまっては、その後の桜井の組事務所からの逃避行に意味がなくなるわけで、こういうチャート図もありかもしれないが、やっぱり蛇足にしかみえない。桜井を追い詰めるもう一方の不穏なものとしてもう少し前から登場させてもよかったのでは。
あと、同時進行のドラマをふたつの視点で一瞬ずらして表すカット割りも、気が急く読者的にはちょっと苛立ち、神さま視点ですっと書き飛ばさんかいと、読んでいる最中には思ったものだが、まあ読み終え冷静になればその苛立ちも芸のうちだったかと─いや、楽しい読書でした。
暴力の連鎖というのか、高い場所(桜井)から宮間へ、宮間から暴走族へしたたる熱いドロドロと、それとは別の狂気の痛み(目玉えぐられは怖い)もぞくぞくするほど気味悪かったし、先ほど記したモール駐車場のカーチェイス、関係者2人が死んでるが、けが人などもっと多いだろうし、読んでる途中で体が揺れてくる(ツイスターする)気分感じてゾクッときました。あとやっぱり桜井の逃亡シーンも。サクタロウでも中華料理皿洗いから逃げ出すシーンが秀逸だったがこちらも両足踏ん張って読みました─体力使う読書だぜ。
安い中年無職がぞろぞろ出てきてそれなりに脇役張っていたけれど、あれじゃないか北関東だったらブラジル移民とかもっと安い連中もいるだろうにでる間がなくて残念だった。
実は、昨年中公文庫で「今日の特集」購入したんだが、第一話読んだまま放ったままになっている。こちらでは有り余るほど放出されているツイスト感を第一話から見出しにくかったせいだ─かんばってツイストしてね戸梶圭太よ。
蛇足、えと原発事故とかセシウムとかの加筆はもったいなかった。