中公文庫 2010年10月刊 大竹昭子 図鑑少年

図鑑少年 (中公文庫)

図鑑少年 (中公文庫)

これくらいの怪談だと、まあ普通に読めて普通に怖がれます。長野まゆみあめふらし」になるとちょっと怖くなりすぎ「読まなきゃよかった…」と後悔しはじめる。はらはらと、実はウキウキと狂人・知的障害者を見入る…魅入っているのか(「真昼の乗客」「おじぎ草」)、2時間ダウン症朝鮮人青年を見守ったのか見咎め続けていたのか分からない物語などから著者の“心惹かれるもの”がまあ直截に理解できるから、そのウエーブを心地よいと思えればすてきな奇譚集となる。
冒頭の「引っ越し」で家じゅうの電気製品が壊れファックスが迷走し、2話目の「ポルトガルのナイフ」では宅配便の配送人も間違え始まる。「出火」でも郵便配達夫の配り間違いが怖さを倍加させていた。都市空間の緊密性からこぼれおちた密やかな暗がりが孕む矛盾や不安が、こういう巫女に小さく吸い寄せられるのでしょうね。「五十円公園」は好きな短編だが、逆にこの短編集では浮いてますね。
ほぼ日刊イトイ新聞アーカイブス。上段は大竹さんへのインタビュー。下段は「図鑑少年」小学館版の編集者によるアネクドートが。

http://www.1101.com/otake_akiko/
http://www.1101.com/editor/1999-06-17.html