創元推理文庫 10年3月刊 e-NOVELS編 川に死体のある風景 ネタばれ感想文です

04年から05年に断続的に<ミステリーズ!>に発表された“川”が舞台の推理短編を一冊にまとめた単行本が06年に出て4年後に文庫化。ま、川である必然もないみたいで大倉崇祐のは山岳ものだし、黒田研二のも川を死体が云々ではなく水没車両だし、だからカバー裏に書かれたような“光射す美しい川面に、ゆらゆらと死体が流れてくる。その死体にはいったいどんなドラマと謎があったのか─”みたいなのはないです。ま、ないですがトップバッター歌野晶午「玉川上死」にだけ、ネタばれちょっと一言を。
これ、いじめられていた少年が復讐殺人の物語です。復讐殺人のトリックを解くのがいじめ役で相手に殺された少年の父。なんというのかな、これ、もすこし抒情豊かにドラマティックになる素材ではなかったか、そうでなければ倒叙ものでね。までも、トリックとかはすごく苦しいし面白味も少ない。素材だけがすてきなんで、こういう競作短編で使われずにいたなら、ちょっと重くてほろ苦いすてきな作品となったのではという気持ち─あ、それだけ言いたかっただけなんで、どうもでした。