文春文庫9月刊 濱嘉之 警視庁公安部・青山望完全黙秘

完全黙秘―警視庁公安部・青山望 (文春文庫)

完全黙秘―警視庁公安部・青山望 (文春文庫)

すいません、勘違いして購入。文庫書き下ろしだったのね、まあたいがいそういうのってアレなのね、もう書き下ろし時代劇並みのひどい設定でした。まあ当人の履歴などカバーで読めばそれなりの経歴を持つ人なんだから佐々淳行みたいなノンフィクションで書けばいいのに。
えと、よかった点。警視総監賞に関する記述、賞詞一級とか賞誉一〜三級とか、捜査員全員が賞を貰えないとか。監理官、理事官、参事官とかの序列とか警察学校での同期とか「教場(担当教官の名がつく)」その他、警察小説を読むうえでいままで知らなかったこと、今後知っておくといい知識などいくつもあった。
ま、そのうえで著者には優秀ではなく人間性に欠陥もあり過去に苦い失敗もあり、日々のやりきれない仕事に疲れた主人公で同じ小説が書けるのかを考えてほしい。あと、エピローグでは寝屋川太郎の慟哭を持ってくるのがオーソドックスってもんじゃないのか。
バブルの時代から「空白の20年」、オリンパス事件や安愚楽牧場その他アングラ経済事件で日の目を見なかったものが、まだ出てくるかもしれない。警察やら正義やらの無力などがこうした小説の形で「何か誰かへのメッセージ」として提出されているのかもしれないが、いずれにせよ読ませる力がなくちゃ、告発だってへなへなになっちゃうし。