集英社文庫09年9月新刊 栗田有起 マルコの夢

マルコの夢 (集英社文庫)

マルコの夢 (集英社文庫)

悪夢を振って叩いてビューッと引き延ばしたらファルスになった。ついでに会話体にソフィスティケイトさせ改行を多くし活字もでかくしたら文庫本ができましたとさ。
もちろん小説の基本となるべく著者を襲った悪夢はそれなり不安で不気味だし、脚色したくなるよな登場人物ではあったことだろうが、でもな、おとぎ話にしても“オチ”というか、物語の中で起承転結の結がもすこし鮮明であってはいけなかったか、いや、逆に悪夢に還元させてもいいのだし、中途半端で消化不良なディミュニエンドだったろう。
姉や父や母というように、わたしたちのみる悪夢たちにはいつも妙に若く苦々しい肉親たちが嬉々として登場し、こちらをげんなりさすわけで混沌から小説(大したものじゃないが)の生まれる過程みたいなものが読者にきっちり伝わりそれはもちろん心地よい。
だが、何より心地よいのは鴻巣友季子の解説です。

小説家の想像力というのも全く猛々しい、いや、茸々しいものであると感心した。

ジョン・ケージからインド神話まできらぎらしいレビューを、でもとてもさらりと記す解説者の薄目をあけて半分見ないふりしてるのが好ましい。