新潮文庫10年1月刊 大平健・倉田真由美 こころの薬 幸せになれる診療室

こころの薬―幸せになれる診療室 (新潮文庫)

こころの薬―幸せになれる診療室 (新潮文庫)

yom yom」連載時にもこれ、感心して引用しました。精神病にブームがあるだの(初診、31ページ前後)昔と比べると重い精神疾患の患者がほとんどいないとか(診療2回目、78ページ)─昔というのは土居健郎がバリバリの現役の頃だそうです。その他、いろいろ勉強にはなりましたが、それとは別に感心というか不審というか、大平先生、不眠の経験がないとおっしゃっている(37ページ)し嫉妬心そのものが分からないと(50ページ)なると、なんだかよく分からないぞ。春日武彦も患者が夢の話をいちいち言うのに腹立てて「自分は夢なんぞみたことがない」と威張っていたなあ。精神科医ってのはこれではなんだか精神を病むことを知らず、知的好奇心のみで患者を診ているみたいな半面もあるのかと疑っちゃう。
いや、精神科に限らないか、医を極めるということは、別に自分の身体の意味(や無意味)を知るという作用でもないし、自分が罹ったことのない病気のほうに興味は湧くだろうが、でも本当にその病気の辛さ痛みを分かっているわけじゃないわけだしね。
精神科医臨床心理士の仕事振りを買いかぶっていたわけではないが、心の奥底の闇を晴らすみたいな作業ではなさそうでそれよりなんだか患者のほうもわりとみな、どうでもいいようなことで精神を病んでるみたいでその辺「人間というのは情けないものだ」などとわたしが慨嘆しても仕方がないんだけれど。