中公文庫 08年3月刊 ロブション自伝
- 作者: ジョエルロブション,Jo¨el Robuchon,Elisabeth de Meurville,伊藤文
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2008/03/23
- メディア: 文庫
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カバーに大きくロブションの写真。労働者階級のおっさんが眼光鋭い。我が日本の三ツ星すきや橋次郎の小野次郎は、いま少々飄然と、かつやさしげに写真映りしていたようではと勘ぐるのは、ロブションさんの商魂にそうとう嫌味も感じているからか。
恵比寿ガーデンプレイスはとても大好きな空間で、でもあのお城のようなタイユバンでお食事したことはありません。地下のパン・ケーキ販売店でのみのお客でしかなかったから批評は全然できません。
私は、もう見習いはとっていません。友人や、友人から熱心に紹介された場合は別にして、見習いはとらないことにしたのです。以前は、たくさんいたのですが、もういらないのです。そうした見習いの多くは、入るためには頭を下げるが、一度店を辞めると、私の店の批評を始めて、私が厳しいということを他人に触れ回ったりする。それだけならいいが、アイディアを盗んで、料理の写真を撮っては、レシピを書き写し、自分自身の店をオープンした時には、料理をコピーして、仕入先まで盗んでしまう。そして、好きなだけ私の批評を言うのです。率直に言って、見習いはいりません。
「1981年12月─初めてのレストラン」より、ラスト近くの抜粋
最初の方では「料理は学校教育ではなく、見習いで覚えるものだ」などと言ってるし、自分の料理を真似されるのは嬉しいなんてことも本書中で言ってるんだがなんだかなあ。まあその他、職人ならでは(悪い意味で)の矛盾だとか世相批判は書中のあちこちにみられそのへん楽しい読書ではあった。付加価値税やクレジットカードの手数料など、まあ実際知らなくてもいいことまで教わったような気がするし、だからある意味この本の構成者は里見真三並の立派な編集者なわけでしょうね。
引退宣言していた本書出版時だったはずなのに、いろんなビジネスで今も世界を駆け回っているロブションさん、なんだか彼の恥ずかしい部分が無意識のうちに下品で情けなく吐露されているのがわかり、まあそういう意味では良書なのだろう。よい読書体験でした。