養老孟司「運のつき」

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というわけで養老先生、ハンニバルに続いて再登場。
のっけで「いずれ死ぬ」なんてタイトル。「理屈で解決しないから、具体的に人生を生きるしかない」なんてある種の諦念みたいな人生訓みたいで、また失敗かと購入したことを後悔したんだけれど、いやけっこう深くて執念深い養老イズムの溢れたテクストとなっていました。
中井準之助という養老先生の東大解剖学の恩師が、弟子の養老先生に「助教授がなぜ(解剖遺体の)引取りをするのか」と叱ったというエピソードが第3章63ページで出てくる。心の中で師に反撥したのが養老先生の価値観が確立した瞬間だと、それ以前の読者にはちっとも納得いかぬのに勝手に大見出しとしてしまう。それ以降の本書で、養老イズムの本質が語られている。
たぶんものの本質が分かる人は、それ以前の氏の著作や言動から、養老イズムの本質を分かっていたんだろうけど、わたしの場合ようやく「(大学)紛争後の大学の現実」に氏が捉えられていたという現実を知ったということか。