東京創元社 09年10月刊 桜庭一樹 製鉄天使

製鉄天使

製鉄天使

桜庭先生はライトノベルの方だったそうで、まあつまりはこういうフォルムを云うのだろうが、だったらそのノリでこちらセールスされたほうがよかったのでは。「仰天の快作誕生」と帯に記すほどのものではなさそう。
うーん…と、赤朽葉、私の男─となんだか変ではないかい?七竈でひとつの頂点を感じたけれど、あれで世界をつかんだって気分でこの先渡っていこうって大関日馬富士じゃないんだぞ。でも“犬です”よかったよね。
まあ、もちろん暴走族という人たちとわたしは殆ど交渉はないけれどだからといって、バイクに乗って鳥取県の人が広島だの山口まで夜中走って喧嘩してまた朝までに帰ってきてなんていう、でもそれがいわゆる青春かな?

不運にも花火(※人名、特攻隊長)とタイマンはるはめになった敵チームの特攻隊長は、恐怖にさらされて、年がまだ十五でも、十六でも、いわゆる引退年の十九と同じぐらい、一瞬で大人になってしまいそれきりハイウェイを一メートルでも走らなく安った。ある者は、学校指定の黒い鞄に、三折靴下、真顔で簿記や算盤の授業にも出て、資格でも取るかと、眩しい朝の世界に踏みだした。ある者は突然美術部に入って、油絵の具で狂ったように花瓶の絵を描きだした。「東京の美大に進学したいんじゃけど、どうじゃろか…」少女の胸に燃えていた走り屋の魂は、朝日とともに消える蜻蛉の姿のように、夜毎、はかなく潰されていった。
 三章 スーパー・デリシャス・アイアン・ガール 冒頭付近より

うーん、やっぱり鉄を自在に操る少女と、暴走族の生態ドラマといっしょで読者を乗せようっていうのは、もうすこし小説技法が必要ではないのだろうかと。