幻冬舎文庫4月刊 根本敬 因果鉄道の旅

いやあまともで頼もしい文学作品です。糸井重里「私は嘘をつかない(だったか?タイトル自信ないが)」を読んだ時程度の衝撃か。まあ宮本常一ほどとはいわぬがドラマを大いに感じました。
蛭子能収ウォッチングとかつまらない作品もあるが(宮本常一だってそうだし)第一話の「内田研究とビッグバン」は凄いね。破滅派私小説の舞台裏みたいというか、こういうタイプの可笑しな物語は見たことなかったのですっかり魅入られました。途中のインタビューだの手書き私信など異化効果にしては情けないけど、まあ内容があれだし主人公のあられもなさがそんなの帳消しにしていた。
「尹松淑さんのこと」も危険でおかしいのだけれど、こちらは逆に予定調和みたいで読者のわたしとしては“フムフムさもありなん”くらいでもすこしアクロバットがほしかったかな。
漫画家としての根本敬河出文庫で知ってたけれどどちらかといえば近づきたくない画風内容で、でもこうなると活字媒体でのご活躍を期待したくなるね。