番外編─書皮

一昨日の新潟日報文化欄中署名記事で大きくブックカバーの特集をしていた。わたしのブログ上での友人でもある書皮協ありすさんへのインタビューも載っており(年齢も記してあった、ははあ…そうだったんですか。それはともかく新潟日報のWEB上に当該記事は載っておらず、まあそういうことでしたらこちらで転載させてもらっちゃいますね、ってまた叱られちゃったらどうしよう。

書店ブックカバー
大切な本を優しく包んでくれるブックカバー。傷みや汚れから守るばかりでなく多彩なデザインを眺めるのも楽しい。書店によってはオリジナルの一品を設けているところもあり、店の歴史や独自の物語が込められているものもある。今年は国が定めた国民読書年。一枚の薄い紙にこめられた“厚い”ドラマを紹介する。
【学芸部 栗原淳司】
多彩な柄 眺め美しく 日本独特の文化 愛好会も
「カバー、おかけしますか?」書店で交わされる何気ない問い掛け。これをそのまま題名にしたブックカバー集(出版ニュース社)が2004年に出版されている。開いてみれば、全国の書店のさまざまなデザインのカバーが並ぶ。風景、動物、植物、文字、ご当地もの…。色合いも鮮やかで、バリエーション豊富だ。
編集にかかわったのは、全国のブックカバー愛好者たちで作る書皮友好協会。27年前の結成から、毎年1回、集めたカバーを持ち寄ってその年の大賞を決めている。同会の中西晴代さん=静岡市=によると、ブックカバーは日本独自の文化という。「調べてみると有名な作家が描いたものだったとか、それぞれにドラマがあるんです。本はどこで買っても同じだが、カバーはお店の『顔』。店ごとのプライドやこだわりが分かる」と、その魅力を語る。
「何げなく身近にあるものですが、一度広げてみて眺めてください。心を引きつける何かがあるはずです」
一方で、ブックカバーをめぐる状況は厳しい。「マイバッグの普及などエコ志向の高まりで、カバーを断る人が増えている」と指摘するのは、上越市本町4にある春陽館書店の熊田雅明代表。加えて出版不況や活字離れ。「店独自のものは経費の問題が大きい。曾ては独自のブックカバーを使っていた街の書店の経営は苦しく、店そのものがどんどん減っている」と現状を話す。
尚文館書店(柏崎)
「どのカバーをお掛けしますか?」。柏崎市本町3の「尚文館書店」では、色柄もバラバラで、それぞれに個性が感じられるカバーを揃えている。当初5種類だ他が、人気のものはすでに“売り切れ”。カバーの脇には「柏崎高校」の文字と生徒の名前が記されている。
実はこれ、同高校で美術選択の授業の一環として製作されたもの。仕掛け人は、美術を担当する鈴木清子教諭だ。
「作品をただ人に見てもらうだけではなく、実際に使ってもらえる喜びを感じてほしかった」と話す。
2年前からブックカバーを美術の授業課題とし、特によくできた作品を選んで印刷。昨年から同書店などにおいている。
店側の評判も上々だ。「今年の作品も楽しみ」というのは同店の小林久美子社長。最初にもらったとき、色使いがきれいで、高校生の自由な発想のデザインに驚きました。お客さんも喜んでくれている」とほほ笑む。
現在、昨年生徒が制作した分の印刷に向け、校正段階。切り絵で描いたブックカバーで、今回は同じく鈴木教諭が美術を教える柏崎工業高校生徒の作品を含めて21種類。2月中旬には同店などにお目見えする予定だ。
柏崎の海と風車を描いた柏崎工業高校1年の戸沢亮介君は「いつも見えているきれいな夕日が表現できてよかった」と出来栄えに満足そう。秋の夜長をテーマにした柏崎高1年の神林帆南さんは「もし自分のカバーを使っている人を見かけたら、すごくうれしいと思う」と、街での再会を期待している。
北光社(新潟)
今月末で閉店する新潟市中央区古町通6の老舗「北光社」は昨年10月、同店の歴史を伝えるブックカバーを2日間限定で提供した。
描かれているのは1919(大正8)年の同店の様子。着物姿の女性が街角で本を開き、洋服を着た男性が、店内に積まれた本の山から一冊を手に取る。時代の空気と店のにぎわいが伝わってくる。
同店で開かれた、新潟の街や文化をテーマにした市民団体主催のイベントを機に作製。佐藤雄一店長が店に残っていた当時の画をもとにデザインを考えた。
「普段とは違い、カバーを断る人はほとんどなく、カバー欲しさに本を買う人もいた。どれだけ店にとってブックカバーが大事か実感できた」と振り返る。
このほか、同店では長年、青緑色の下地に漢字やロシア文字、古代エジプトヒエログリフをあしらったカバーを使ってきた。
それぞれの文字は、杜甫の詩や紀貫之の「土佐日記」、ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」などの一説。詳しい由来は分からないというが、活字文化の歴史を示した味わい深い品だ。
佐藤店長が「どの店のよりかっこいい」と自負するこの青緑のカバーも、もうすぐ役割を終える。「でも、これまで提供したものが新潟県中にあるはずだから…」。ブックカバーは本を買った人の手元に、店の思い出とともにずっと残っていく。
本の店英進堂(新潟)
創業まもない頃の店の写真を使っているのが、新潟市秋葉区程島の「本の店英進堂」。昨年、50周年を記念して制作した。年表や商店街地図を添え、店と地域の歴史を伝えている。
新津市中心街で創業した同店。諸橋武司店長は「わずか3坪で始まったんです。この写真はその3・4年後にすぐ近くに移転した頃のもの。それでも5坪ですからね」と話す。
店の原点ともいえるこの写真。「いつか何かに使いたい」と保管してきた。添えた商店街地図は1981年のもの。同店を合せて6書店が示されているが、いまは1軒も残っていないという。
郊外の現在地へ移転したのは10年前。この際にもオリジナルのブックカバーを作っている。読書に欠かせないランプをあしらったデザイン。かつて紙袋用に使っていた絵柄を、復活させたという。現在記念ブックカバーを使用しているため、このカバーはお休み中。「独自のカバーは宣伝になるし、書店にとってステータスだから」と諸橋店長は語る。
同書店は岩波文庫など学術系書籍を多く取りそろえ、絶版文庫も販売するなど、独自の店作りを展開している。「地方にいてもしっかりと本が読める環境を作っていきたい」という思いからだ。諸橋店長は言う。「ブックカバーは、意識すればそばにある空気みたいなもの。書店も同じだと思うんです。店も地域の住民とともにあって、当たり前のように普段の生活の中にありたい」

いや、残念ですね、書皮協の皆さん。柏崎の書店では20種類の書皮だそうですし、北光社のスペシャル書皮はもう数ヶ月も昔の話だ。それより何より北光社は本日付で閉店してしまったし。わたしもジュンク堂紀伊国屋、あとは職場の文教堂宮脇書店(後日注:店名間違え)しか行かないもので、古町衰退はわたしの問題でもあるのだ。
数年前に文庫チラシを蒐集しておりますが何か御用はと、ネット上でシオリを集めているサークルなどに情報を聞きに行った時、書皮蒐集家に出会い、おやそういうことでしたら新潟市内の書店のカバーを一巡集めてきて進ぜようと大口叩いたのに、いやあ面倒だったな。小さい書店は共通のカバーだし、カバーもらったら大手の書店だったり、なかなか思うように集まらず冷や汗をかきました。半年くらいして集まっただけのカバーを贈ったのだが、そのうちそちらさんが持っていなかったやつはホンの数枚でいやあでかい口叩くものではありませんでした。
また、ちょうど新潟県の読書推進運動みたいな時期で、どの書店でも共通の《本を読みましょ》みたいなカバーを出しやがったりもして「普通のカバーにしろ」と心で毒づき口には出せずで、辛い思いをしたのにあとで書皮協の人からはそういうローカルな運動のカバーも喜ばれたりと、なかなか複雑でした。
そちら書皮協の皆さんから、文庫チラシなど送ってもらったりしたのですが、残念ながらそちらのコミュニティからチラシ蒐集にシフトする方はついに出現しませんでしたね。ま、その程度の趣味のわたしです。