文春文庫09年9月刊 井上荒野 学園のパーシモン

学園のパーシモン (文春文庫)

学園のパーシモン (文春文庫)

みながみな、上手に大人になれるわけではないし(老いてなお…だし)、もちろんそれは誰もが知っていることなのだし誰もが通る(通ってきた)道だし。ため息出るよなそんなジグザグ大きく遠回りな主題を淡くかわして学園長が死に、主人公たちはみな小説からこぼれるこれから先の日常を生きるのだろう。
作品のよさをこういう風に喩えるのは変だけれど、上手くできた日活ロマンポルノのような味わいを感じさす小説でした。
「人妻暴行マンション」に通じる映像と物語の軽さ─誉めてます、フラットな画質が逆に奥深さを醸すというか、特に美術教師が唐突に裏ビデオの販売人になるとかかな。転々と物語が不器用に屈折するようでいて、わりときちんと収まるあたりはでもロマンポルノよりましか。
高校生同士のデートでヘルツォークの「フイッツカラルド」を観たりして、そのへん東京はいいよな、新潟のレンタルビデオ屋にそっち関係(意味ナシ、自分好みとだけ)ってぜんぜん揃ってなくて残念。来週恭が観たがった映画って「小人の饗宴」かな?ありゃ、あきれるほどへんてこな映画だったし、あのころ80年代、難しげな映画ばかりを観ていたもんだな。