文藝春秋の新刊 2006・2 「チョコレート」©大高郁子

象の押絵のチョコレート。つやつや感のないチョコレート。邪推だけれどこれ、チョコのプレートじゃなくてビスケットでしょ。アルファベットのビスケットにチョコがコーティングされたお菓子については向田邦子がなにか書いてた。不誠実なチョコレートへの怨嗟をしるしていたのだったか。
チョコを包んでいるのは赤く塗られたアルミ箔かな。裏に回るとシワだらけだったりする。鼻腔を捧げた好戦的な象を鎮める電解的な薄い金属。どうしてアルミ箔を歯に当てるとひどく不愉快になるのか。イオンか電子かが飛び出しやすい金属がアルミで、歯に向かって電流が…とか覚えたんだが、間違っているかもしれない。とはいえ、思い出しただけで肩甲骨のあたりがすこし怯え震えるあの不快感。チョコを包む銀紙には、どんな利点があるのか知らないけれど、冴えてるこんなあざやかな赤のパッケージだから、こうなりゃすこしの不安も呑みこむしかない。