「…横メルカトル」続き

2つのいじめ小説と恐怖の「Ωの聖餐」を除けば、幸福な読書体験というほどの作品群ではない。
「悪夢狩り」とか、まあいくつかの焚書関係SF小説の模作でしかない「オペラントの肖像」。
「卵男(エッグマン)」は、まあなんだな、クラリススターリングがもう少し優美に描かれないとつまらない。
「すまじき熱帯」も「地獄の黙示録」のつまらなさとどっこいどっこい。赤ん坊の死体で密輸袋を作るとかいう部分にげっそりもするが、シベリアから砂金を密輸出していた中国人のメソッド使っただけみたいで、「笑う山崎」の海外旅行という言葉のほうがぞっとする怖さを内包している。
「独白するユニバーサル横メルカトル」素晴らしいタイトル。内容は素晴らしくない。
「怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男」SM小説としての気概がないぞ、なくてもいいけど。「イビサ」の怖さを分からない人ではないとは思うのだけれど。
というわけで前半3作で、魂を抜かれたわたしではありますが、後になればなるほど正気に帰る悲しい読書体験みたいでしたね。