文藝春秋 7月刊 青柳碧人 国語、数学、理科、誘拐

国語、数学、理科、誘拐

国語、数学、理科、誘拐

3ヶ月かかった、一気に一冊読み終えるなんてなんだか「良書にめぐり逢った」なら当たり前のケースだと50年思っていたのに、あるとき急にどんなテキストも一息つくとその先進めなくなる病気になってしまい、ある意味活字恐怖症みたいだった。原因はいまになっては分からない、2ちゃんのスレなんかで、お話しへの変な耐性がついちゃったのかもしれないし、実は初期の痴呆かもしれないと恐れたんだが、まあこれくらいの読書なら何とかなるということで、リハビリの期間に移行したのかな。
まあこれ、小説ではないし物語としてのドラマ(起伏や葛藤やそんなこんなのドロドロ)などどこにもないし、文藝春秋から出すなよこんなものなんだけど、まあでもリハビリにはこんなのが効くのかな。主人公の視点なんて、まあいうだけ野暮だがもう少し神様の視点ですべてを統一してほしかったとか、綴じた設定から洩れ出るリアルがどこにあるんだ…とかまあそういうのは、いまさらどうでもいいか。よかったよ、読み終えたということだけで。
学習塾が舞台のドラマ、塾の教師はみなかつての塾生だとかゼロ和ゲーム的な環境にあってほんとの最初に生徒が英単語を知らぬ教師を揶揄するシーンがあり、ちょっと期待したんだが(でもその期待に応えられるとたぶん読めなくなるんだが)何の進展もなくフラットな展開がズンズン続きます。まあでもよかったよ、水圧と浮力の問題がどんなのだかとか、イカとタコの問題の答えは何なのだとか、そのへんまで含めたミステリー仕立てにすればもっと楽しいと思うが、作者の力量がそれに追いつかないのは大変残念、いやたぶん永遠に追いつきそうにはないなあ。