文藝春秋3月刊 池澤夏樹 氷山の南

氷山の南

氷山の南

まあなんですな、新聞小説にケチをつけても仕方がないわけで、それなりワクワク読書したんだからいまさらそれにひとことなんて野暮なんだろう。ジンという主人公の青年にちっとも感情移入できずに読了したのは、ぶざまに年を取ってしまったわたしが悪いからではない、多分に作者の未熟のせい、あまりにリアリティなくしちゃっていっそ作者が乗り込んだ方がよかったかと。曳航されていた氷山を「箱舟」と呼んでいた。箱舟をえがいた新聞小説をわたしは遠い昔に読んだことがある。井上靖の「四角な船」ね、ありゃ面白い小説でしたよ、境界型人格障害であるらしい琵琶湖畔の地主甍氏の妄想から建造されることとなった20世紀の「箱舟」と、搭乗証を手に入れた人々を巡る新聞記者丸子の冒険譚というか、いま読むことができるのかなあとAmazon見れば古書でしか手に入らないようで。残念。
アイシスト(氷山曳航計画の反対者)が操るラジコン機がルータン・ボイジャー型だったというのはでもちょっとぐっときました。ボイジャーってみなさん知ってますか?

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わたしね、ちょっとそそられたんですよボイジャーを新聞記事で知った時。「サクラ大戦」よりそうとう昔だったし、そう考えるとよく練ればアニメの原作としていいセンいったかもしれない。えと、時は1930年代、日華事変の頃か、帝国陸軍航空隊は受領した新型偵察機の使い道に頭を悩ませていた、軍の要請でつくられた超軽量機は高性能ではあるが機体の構造を絞りに絞ったせいで搭乗員の体重制限をせねばならなくなり、男性搭乗員を2名乗せることが構造上ぎりぎりといいう計算結果で、軍令部では苦肉の策として体重35キロ以下の女性2名を搭乗員とすることを許可、日赤の従軍看護婦中より、小柄でも運動神経に優れた少女たちを選抜し、陸軍見習士官に任官させ偵察機の乗員として赴任さす─というようなのを考えたんだけど、まあ、考えただけでした。