集英社インターナショナル1月刊 村山斉 宇宙はなぜこんなにうまくできているのか

宇宙はなぜこんなにうまくできているのか 知のトレッキング叢書

宇宙はなぜこんなにうまくできているのか 知のトレッキング叢書

最終章で「マルチバース」という文言が出てきて、うーんきついところで、所謂多元宇宙とは違う概念(太陽系や銀河系のない宇宙とかあっという間に壊れちゃった宇宙とか)で思弁的にしか語れぬ場所でそこから先は物理学者の出番じゃなさそうです。

しかしいまのところ、まるで宇宙が人間のためにつくられているように思えることを、「神様抜き」に説明する方法は、マルチバース以外にありません。無数に生まれた宇宙の中で、この宇宙だけが人間をつくり出す条件を揃えていた。人間の生まれなかった宇宙は誰にも観測さてないので、存在そのものが認識されない。したがって、そこでどんな物理法則が働いているのかも調べられません。人間を生んだこの宇宙だけが存在を認識されているのだとすれば、そこで働く法則が人間のためにできているのは当然でしょう。
 第7章 宇宙の未来はどうなるのか p.182

まあ、なんだかちょっとキワモノみたいな最終章ですが著者は「宇宙は本当にひとつなのか」という啓蒙書も書いています、マルチバースだけで一冊書きあげたのかな?それはともかく全体としては中学生程度の知識(わたしです)でも理解(雰囲気だけだが)できた楽しい読書だったけれど、難点というのかもうすこしアンチというのか最前線での反論や論駁や仮設なんかも知りたかったが、でもそうするとこういう「知のトレッキング」とは違うものになるだろうし、いやまあ啓蒙書と研究書との中間(ほんのちょっとだが)がほしいということかな。
暗黒物質あたりですかね、分かっていない最大の謎。そこの肝要な部分がある程度解明された時点で、どなたかでもこういうわかりやすい啓蒙書を読みたいのだけれど、あれれ、それってわたしの生涯に間に合わなさそうだし。でも標準模型?うちらは昔、統一場理論っていってたんだがそれに「超ひも理論」がいっしょになったみたいな部分や、それからクオーク、ボゾン、フェルミオンとかの物理関連はなんとか勉強とまではいかずとも、基礎的な言葉の意味くらい理解できるようになりたいものです─宇宙論とは別にでもね。立花隆の「小林・益川理論の証明」読んでみようか、まあそこから始めるしかないかも。