新潮文庫 今月の新刊 2010.08

表紙はYonda?アニメーションDVD「Yonda?NONSTOP」より
裏面「8月のヨンダ?」
─注目の新刊 そうかもう君はいないのか
─今月のイチオシ 《守り人》シリーズ最新刊出ました!
─トピックス 「心霊探偵八雲」に続くニュー・ヒーロー誕生! 真田省吾、22歳。職業、探偵。神永学・待望の新シリーズ「タイム・ラッシュ─天命探偵 真田省吾」発売!
─映画化話題作「東京島」「小さな命が呼ぶとき
購入しました、待望の新シリーズ。いやあ、まいったぜ待望されていたらしい神永学のニューヒーローには。これって漫画の原作だったらそれなりいいのかな。屈託がないというのか、作者は「生まれた時からドラマ漬けで…」みたいでアクションドラマのような日常で括りたいんだろう、括るのが快感なんだろう。ふつうの人のふつうの日常とかその中の屈託とか普通に暮らしていてどんどん窮地に追い込まれるとかの緩いゆるーいサスペンスみたいなのがあったり、でも暮らしのはざまに潜む裂け目なんぞを目をそらさずに少しの後ろめたさを含有したままスルーするあたりのほんとうのドラマの本質な部分にあまりに鈍感すぎて、読後こんなに両肩が重すぎる。
間違いついでに海堂尊の「ジーン・ワルツ」。リリー・フランキーと2冊、「…100冊フェア」で購入したんだけれど(バンダナは嬉しいが)その2冊ともひどく寂寞とした読後感しか得られなかった。「ジーン・ワルツ」に関しては画面がたやすく想定出来すぎるというか、これって小説である必然が何処にもない。本当に、テレビドラマの原作本という以外に読みようがないんだよね。
医療行政への筆誅とは分かるが、だからって不妊治療の保険適用を渋る厚生労働省へこの小説が届くとはとうてい思えない。まあせめて青井ユミの行状から小さい教訓でも「…100冊フェア」で購入した若者たちが得てくれれば…って、でもやっぱりそちらあたりも2時間ドラマにおまかせしたほうがよかったのではと、とても暗澹たる読後感でした。