朝日新聞 暮らしの風 2009 8

太郎を乗せたアオウミガメが、ケルプの森を遊弋する。つまりは太郎は西海岸で時を忘れるほどの“幸福の絶頂”を味わったのね。海中はあざやかさ濃厚なのだが冷えて寂しい、生命に囲まれているというのに沈殿とか澱とか、そんな言葉の似合う死の世界なのだね。太郎の行く末を知るわたしたちにとっては、この画を覆っている不安なほどの静謐さ(死の世界への旅)が相当怖かった。