創元推理文庫 08年9月刊 ロバート・ランキン 圷香織=訳 ブライトノミコン

ブライトノミコン―リズラのはちゃめちゃな一年間 (創元推理文庫)

ブライトノミコン―リズラのはちゃめちゃな一年間 (創元推理文庫)

「すべてがこの土地に集中している」ミスター・ビーンはビールを飲み干し、新しい缶をあけた。「『ブライトン十二宮』─すなわちブライトノミコンがすべての根っこ、窓口、超自然現象の震源地だ。時空上に開いた穴であり、妖精塚に迷い込んだ連中が吐き出され、過去から来た何かが現在に出現する場所なのだ」
「何が来るんです?あの紅茶の次に」
「悪だ」ミスター・ルーンが言った。「それも究極の悪が、今夜やってくる」
 第4章 第一部のラストシーン

わはは、ろくでもないものしかやってきません。ブライトン十二宮の地図(各章の扉に描かれている)が、まずは面白かった。わがNHKのお好み番組「熱中時間」で、自転車GPSで東京の都市地図に絵を描く趣味のおじさんが出てきていたが、そういう趣味の本家はあちらに(ホームページがあるとどこかに書いてあった)いらっしゃることがわかって、それは脱帽の発想力だ。この小説はともかく。
小説の中身はといえば、まあ味わい深く楽しむたぐいではまったくなく、これだけの厚さ長さで表現せねばならなかった中身とはとても思えずひどくゲンナリの読書体験でした。下品で洗練されてない繰り返しギャグの多さは、カルガリー五輪だったかイギリスのジャンパーが手をぐるぐる回しながら最低の成績で滑り終えたシーンと二重写しだったか。

※…今、調べましたらエディ・エドワーズという名のジャンパーだそうです。詳細は以下のブログに。

http://blog.livedoor.jp/kenji47/archives/50274731.html

(すいません!ブログ管理者のプロフィールがわかりませんので、勝手に貼ります)

モンティ・パイソンや、映画ドッキリ・ボーイシリーズ(古いね、アマゾンでも売ってないや)オースティン・パワーズシリーズとか英国流のくぐもったギャグたちと同類のうんざりギャグにもちろんこちらも反応しちゃっても、でも陰鬱でため息交じりの笑みしか浮かべられない極東のモラリストたるわたしではちょっと太刀打ちできないというところか。幾度もタクシー運転手をぶん殴ってただ乗りしていたミスター・ルーンがそのわけを説明するあたりとか、あとバーテンがどこの店にもいて絡んでくるとか、なんかまあそんな繰り返しギャグね、ああいうのって癖になるひともいるのかもしれないが、どうも好きにはなれないな。
まあ、どっちにしろ1冊読んでしまったわけで、今後この人の書物を読むことはないとは思うが、それにしてもわざとでいいからもうすこし洗練とかソフィスティケートとか、そういう種類の読者へのサービスがほしかったです。
圷(あくつ)さんという、苗字を知ったことはとてもよかった。IME登録しちゃいました。