文藝春秋の新刊 2007・8 「桃太郎トマト」 ©大高郁子

11年目となった大高郁子の描く表紙のリーフレット。近年、その素材に静物画が多くなり、初期の頃のようなデフォルメされた人物その他、アレゴリーや比喩を多分に含む物語の挿絵に相応しいような画風が好きだなあと、当ブログ内で紹介しつつすこし腐したこともあった。
チラシの表紙のひとつひとつが本音を言えば商業作品であり、媒体としての働きを担当者が認めたなら、そのさきはわたしの呟きなんぞ意味はないが、いささか最近の作品は“手抜き”めいていると感じたことも。
そういう目で見ていたわたしだったが、このたびのトマトはぐっときましたね。ああ、そうだったのか、大高郁子のレアリズムをこれまでわたしは一顧に感じれなかったということなのか。
トマトの赤に濃淡はない、照りもない、歪みも汚れも成熟もない。それがPOPだ、アートだ、イラストレイターだ。そしてトマトは中空にあってその影はなだらかでフラット。虚像のトマトなのよ、この楕円は。
だがしかし、ああしかし─このへたの枯れかけた緑はなんだ。枯死する渇きが、痛みが、生物の証であるリアリティが画面の平坦から湧き上がりかけてる。バックの空色の柔らかさが心に滲みますね。

7月の文藝春秋新刊案内は《こちら》にあります

購入したのは永瀬隼介「退職刑事」

「DOJO」は今春、文春文庫で読んだのだが、あまり感心しませんでした。って、それ以外のどんな選択肢があったわけじゃないのだが、あのさ、職場の近所のけっこう大きな書店なんだが文藝春秋の新刊だってなかなかすべて置いてあるわけじゃないんだ。


「新刊案内」チラシを信ずるなら、8部9冊の新刊が出ているはずなのに、現実に見たのは上記2部3冊と「退職刑事」。月末に発行される藤沢周「幻夢」藤原智美「暴走老人!」まで待つという選択肢もあったんだけどね、エヘヘ。文庫はともかく文芸書の新刊って、文藝春秋みたいな大手でも初版5千の世界なんだろうな。
警察ミステリ短編はまだ読んでません。早くに感想文書きますね。