文藝春秋の新刊 2003・11 「葡萄酒」 ©大高郁子

影がね、いいんですよ、この頃までの大高作品。くしゅくしゅくしゅって細いロットリングでスペースを囲っていくような粗雑とクールの両面作戦といっていいのか。
江戸切子に描かれたマリアッチっていうこのナイスな杜撰さとグラス上面にわずかに見えてる血の色に似た赤ワインに透明感がなく淫蕩な揮発性そのものみたいな無謀な一帯を、軽い苦笑とため息でぐいととどめているのが、和風で小粋でグラスを落ち着かす背景色。何の変哲もない蕎麦猪口でしょうみたいに画面を鎮め、香りたちかけた騒擾と紊乱の気配が危ういところで回避されてる…なんてこれではちょっと読み込みすぎたでしょうかね。