文藝春秋の新刊 2007・6 「三角定規」 ©大高郁子

背景色は黒板色なんですが、その色がちょっとスキャナーで出にくいなあ。黒板と対になる三角定規は、わたしの世代だと木製でしたよ。小学中学の先生が黒板に幾何の公式など説明する時、大きな定規と分度器、チョークを挟むコンパスとを使っていた。生徒のほうも時々指名されて、黒板で木製の定規使ったな。普段はあれ、教室においてあったのかな。いちいち教師が持ってくるのも大変だろうし─いやあ、そこまで覚えてないなあ。
でも、今月のリーフレット表紙の定規。直角三角形にみえないんだけどわたしの見方が悪いのかな。立体的になってるのはそれはそれでいいんでしょう。わたしは見たことないけれど立体的な三角定規も、持ちやすければあってしかるべきかと思う。
中学生になって技術・工作の授業が始まり(現在はその授業はないのか)ビニール製の箱に銀色のコンパスデバイダなんぞが入った製図セット(ワハハ!)で展開図なんぞ描いたっけか。
丸善で、プロ用のロットリングだの見て、その価格に驚いたのも中学生時代。

計数器といっていたかと思ったのだが

googleで検索しても、硬貨やメダルを数える機械しか出てこなかった。

https://ios.eplace.jp/member.cgi?CategorySid=13&Level=2&Mode=LastLevel&BeforeCategorySid=1&BeforeLevel=1&SearchFlg=1

そんなんじゃなくて、小学校1〜2年生くらいの算数の時間に使った「すごろく」や「おはじき」その他マッチの軸みたいなものまで入って、数の概念や加減の意味を知るみたいな箱入りの学用品(副教材)があったんだけどな。
どうやってWEB上で調べればいいのか分からないので、謎のまま残しておきます。
竹製の30センチ定規をランドセルの端に立てて通学した。小学高学年時か、いや、、高学年になると算盤ももっていったな。いやいや(否定的な疑問形が多いぞ)教室に置きっぱなしだったか。あっそうだ、わたし裁縫箱(セルロイド製)を通学電車に忘れてしまったことがあった。どういう幸運があったのか、翌日には戻ってきたけどさ。体育着だとかハモニカ・縦笛、図工の日には画材(ワハハ!)の入った木箱も持っていったし画板も私物だったんじゃなかったかしら。

車谷長吉 灘の男

灘の男

灘の男

5月に購入した文藝春秋単行本。「車谷長吉の新境地『聞き書き小説』」と帯に記してあるが、読後感からいうと、これはまあ小説にはなってないね。「赤目四十八瀧…」はスリリングな読書体験だった。のっけから引き込まれ、寄る辺のない重苦しさがヒシと伝わる文章文体、そして惨めなストーリーを齧るように読み進んだ。
そういうわたしなんだが「灘の男」に、文章であるとか小説としてとかなんにしろ魅力をちっとも感じなかった。
濱田長蔵のほうはともかく濱中重太郎は魅力的だねって、当人はもう死んでるんでインタビューできないわけでそうなっちゃったんだろうけど。両者とも実在の人物のようで、会社のホームページがあります。

http://www.hamada-unso.com/
http://www.hamanaka-chain.co.jp/

ありますけれど、いっそフィクションで昭和の市井の無名氏を描き切れれば、それこそ新境地であったのじゃないかな。
インタビューが文学になっている例をもちろん一般日本人は宮本常一で知っており、めざすのなら、第一級の高峰を目指してほしかったな。文学ではないインタビューの傑作が伊丹十三で、塩田地方の呆れかえるような労働者からの聞き書きは「日本世間噺体系」にありましたな…(といいつつ、2階のダンボールをほじくる)…「塩田」と、そのものずばりのタイトルだ。

爺さん 足はもうハダシです。
   ハダシですか?
爺さん ええ。
   熱いでしょうが?
爺さん 熱いんですがな。
   焼けてるんでしょ。下は?
爺さん 焼けとるんですがな。足がアンタ、どない言うてええんか、ヤケドしたら火ぶくれになりましょ?あないになるんですがな。ツチはもうブワーッと焼けとるしねェ。それに水を汲みよって水がどうしても地べたへこぼれるんですがな。それへ日が照りつけて、それこそもうホンマ、煮え湯みたいになりますがな。…

濱田長蔵が牛や馬を使って塩の運送業を行なっていた頃の聞き書きに、餌やら休ませ方などちょっとだけ労働の本質みたいな部分が垣間見れた。それが、最初のほうだったので「そういう物語なんだろうね」と期待して読み進んだんだが、どうもわたしと作者と目の付け所が違っているみたいで、時折かいまみれる「テクノロジー」の部分や「歴史の歯車」的な部分など興味深い昭和の証言を軽く端折ってしまうようでそうとう歯がゆい。
伊丹十三的なアプローチのほうが、わたしにとっては感じ入る部分がおおいにあるということかな。車谷氏の今後がちょっとは気になる。