文藝春秋8月新刊 麻耶雄嵩 さよなら神様

さよなら神様

さよなら神様

カバー腰巻にはこう書いてある「衝撃的な展開と後味の悪さでミステリ界を震撼させた神様探偵が帰ってきた。他の追随を許さぬ超絶推理の頂点がここに」、ははぁ、頂点ですか。新刊案内リーフレットby大高郁子の3行紹介では「衝撃的な展開でミステリー界を震撼させた神様探偵が大復活」とくる。「神様ゲーム」が前作で残念だけど読んでない…というか、はじめての麻耶雄嵩なのでありました、もひとつ紹介文。文藝春秋BOOKS“編集担当者より”ではこうなってます。「あり得ない設定の中で交わされる小学生たちのガチガチの推理合戦は、まさにミステリーの『前衛かつ王道』。他の追随を許さない超絶推理の頂点です」まあそういうほかはないユニークというか一風変わった連作短編集です。
“謎解きのためのミステリ小説”ではなくきちんとアリバイ崩し、ミスディレクションなど推理の楽しさをつたえているんだ、カレー食べるんなら美味しいラッキョウを買いに行く…っていうのはものすごく素敵な謎解きだ…なんだけど、まあなにしろ推理小説にリアルを求めても詮はないとはいえ、探偵たちが小学生で主人公がジェンダーフリーで、性倒錯の原因が恋のさや当てからの殺人となるともう登場人物を記号と割り切るしかなく、でもまあそう割り切って読めばそれなり楽しい作品ともいえるか。
神さま=鈴木くんの存在が必要かどうかは読後の今もなんともいえないし倒叙もののハラハラなどほとんどない(ラッキョウ事件もダム事件も犯人どうでもよかったし)フラットがそこそこ心地よかったりもして、だから逆にラストのどんでん返しのどうでもよさ(主人公もどうでもよかったみたいで)まで含めると、連作として読み終えてようやく鈴木くんがいてまあ良かったかなあというくらいですか。雑誌で一編読んだならなにか少し物足りなく感じたかも。
前作「神様ゲーム」はジュブナイルとして提出されていたそうで、書店で講談社文庫の棚探したけど見つけられませんでした、見つけたらもしかして買ったかもしれない…と思ったくらいの読後感です…ってことはちょっとは称賛してるってことかもね。