「買淫」というコトバは新鮮でした

1ヶ月近くブログ更新できずにおりました。いいわけとしては何だけれど、老眼が進んだこと、花粉症がひどいこと、それと最近飲酒癖がちょっととめどなくなりかけた(自宅でちびちびずーっと飲むみたいな)のとで、何というのか自堕落というのか…でもあれもあるんだね、とても悲惨な読書体験しちゃってさすがにこんなのを感想文でも記せないなあというのもありました。

ハンヌ・ライアニエミ=量子怪盗

量子怪盗 (新★ハヤカワ・SF・シリーズ)

量子怪盗 (新★ハヤカワ・SF・シリーズ)

イシドール・ボートルレくんが探偵役なので、これは「奇巌城」なんだと類推をして、だとすればルパンを救うレイモンドなのだろうが、これがちっとも「奇巌城」にならないんだ、まあ別にいいんだが私が最初にルパンを読んだのが「奇巌城」で、ルパン最大の危機だったしルパンの妻になったレイモンドは最後に殺されちゃうし、もうわたしを浪漫の荒波に攫っちまったのだよ、それがなんだこのクソみたいな未来のルパンは…。もちろん作者のライアニミエさんはわたしほどルパンに拘泥しない、ただの持ち駒として使っているんだろうが何か悲しくて、ちっとも進まぬ読書でした。もっと短編から始めたほうがよかったのでは、華麗に見事に時間泥棒する技を最初に見せていたならまた違う楽しみがあったかな。

トマス・H・クック=キャサリン・カーの終わりなき旅

大いにはぐらかされましたね、裏の梗概を読んでからの読書だったが、まあわりと通俗的なストーリーを頭に描いた。
─息子を殺された主人公が、失踪した詩人の遺したテキストを早老症の少女と読み進むうち、詩人の失踪の理由を知り(犯人を独自にみつけ追い詰めるが返り討ちになった…とか)詩人を斃した犯人をみつけ、テキストを追ううち主人公の息子を殺した犯人も演繹的に発見する─
そんな大団円になるのかなと勝手に読み進めたのだが、全然違いましたね。これがよかったとはぜんぜん思えない。

…前略…
けれども人には、心が衣を引きはがされてむきだしになり、奥底にひそむ激しい痛みや釈明やつぐないを求めて泣き叫ぶ瞬間が必ずやってくる。安堵にすがりつきたくなる瞬間が決まって訪れる。そういうとき、私たちは分別など抜きにした生粋の情熱を抱く。深く愛し合う恋人たちや、死と隣り合わせにある戦場の兵士たち、あるいは大義名分に人生を捧げるものたちが共有する命がけの情熱を。
…中略…
いきなり、説明のつかない狂おしいまでの抑えられない激情が、私をがんじがらめにした。理不尽な死のために闘い、ほんのひとかけらでもいいから正当な決着を手にいれたい。それがかなうなら、もう自分はどうなろうがかまわないと思った。テディのためだけではなく、死ぬ間際まで苦しみ抜いたアリスや、死の床で憤懣をくすぶらせていた合われた父や、若くして亡くなったセレストのためにも。この世のあらゆる時代に生きた、不条理な蜘蛛の巣にからめとられ、不当に命を奪われた人々のためにも。餌の代わりに鞭を食らわされた辻馬車のポニーや、年老いた人力車引きや、アラリック王のために虐殺された奴隷、そしてアフリカ横断道路で春をひさぐ売春婦のためにも。
「止まれ!」私は叫んだ。「止まるんだ!」
…後略…
  第3部 27 より最終部分 p313-314

主人公の息子テディを殺したであろう人物が着ていた黄色いコートをみつけた主人公が激情に駆られて追い詰め、そしてそこで出会った人物の口からすでにさばきは終わっていると告げられる。そして続くエピローグで主人公からこの不思議な物語を聞かされていた人物が許し難い性癖の持ち主で、たぶんある種の制裁を主人公から受けるであろうとの含みを持ってストーリーは終了する。いやしかし何だなこれで魂の救済になるんだろうか?交換殺人みたいに下世話にしたほうが分かりやすくてよかったと思う、くたびれた読書体験。

西村賢太 一私小説書きの日常

一私小説書きの日乗

一私小説書きの日乗

本当にただの日記でしかなく、半分読まぬうちにもう呆れ果てる。功なり名を遂げた作家(なのかよ?)の苛立たしいほど優雅でわがままな日々を怠惰な筆で記しただけではないか、作品への足掛かりやヒント・アプローチなどちっとも感じないし著者の鬱屈や憤懣も、こんな高名な作家になってからではもうみな“斜め上からの視線”となっていてちっとも芸になってない。なんでこんな本買ってしまったんだろうと嘆息。
赤羽とか王子とかの地名がよく出てくるので、きっと現在は北区の居住者なのでしょう、内田康夫みたいに北区の文化的なナニに貢献などしておるのでしょうか。居酒屋などの名前も出ているけれど、もう13年も以前しか知らないわたしなので、土地鑑もなく首をかしげるだけでした。